MIZUKAZE PROJECT STORY

瑞風プロジェクトストーリー

May 2024

vol.28

城崎温泉の歴史や文化にふれる、新たな「瑞風」の旅

 第28回目は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」山陽・山陰周遊コース(下り)で、2023年8月から新たな立ち寄り観光地となる兵庫県北部の城崎温泉をご紹介します。約1300年前に開湯した名湯「城崎温泉」と、そのまちを見守り続ける古刹「未代山 温泉寺」の歴史について住職の小川祐章さんにお話しを伺いました。

信仰と療養が一体となって歩んできた温泉寺と城崎温泉。

 7つの外湯めぐりで知られる兵庫県北部の城崎温泉。JR城崎温泉駅を降りると、温泉地ならではの風情ある街並みが広がります。まちの西にある大師山(だいしやま)には、奈良時代に城崎温泉を開いた道智(どうち)上人によって創建された、「温泉寺」という高野山真言宗の古刹あります。「『この世のすべての人々を救いたい』と願い、諸国を巡った道智上人は、養老元(717)年に城崎の地へ。夢のお告げにより千日間の修行に励んだところ、養老4(720)年に温泉が湧き出たのです。その後、奈良・長谷寺の観音さまと同じ木、同じ仏師による十一面観音像を得てご本尊とし、天平10(738)年に温泉寺を開創。温泉寺は聖武天皇の勅願により城崎温泉の守護寺となり、約1300年にわたり温泉と人々を見守ってきました」(小川祐章住職/以下同)
明治42(1909)年、旧国鉄により城崎駅が開業されて以降、「駅は玄関、道路は廊下、旅館は客室、土産物屋は売店、外湯は大浴場」であり、城崎温泉は「まち全体が一つの旅館」だと捉えられてきました。

温泉寺 住職
小川祐章さん

「お寺と温泉がともに歴史を歩んできたことが、城崎温泉の根幹となる部分。回復を祈る信仰と湯治による療養、二つの側面が一体となっていることが、ほかの温泉地には見られない特色です。病や心の閉塞などあらゆる人々の苦しみを取り除きたいと願った、道智上人の祈りによって出たお湯ですので、この温泉は個人のものでも地域だけのものでもなく、すべての人たちのものである。そんな1300年前の精神が、今も城崎のまちに息づいています」。
実は城崎温泉は、大正14(1925)年の北但馬地震によって全焼した歴史があります。しかし自分たちが愛したまちを取り戻したいと、町民一丸となって復興させたことで、かつての古くからある宿場町や湯治場のような雰囲気を今に伝えているのです。
「焼け野原になった城崎で、当時の町長が最初に見て回ったのは外湯でした。地震による地殻変動が起きたであろうものの、温泉は枯れていない。『このまちにお湯があって、子どもたちの笑顔があれば、絶対にもとの姿に戻れる』、そう町民たちを鼓舞し、まちを復興させていきました」

温泉寺縁起図から仏縁の不思議や街の歴史を紐解く特別講話。

 「瑞風」の旅では、大師山の麓にある温泉寺の薬師堂を訪れます。ご本尊の十一面観音にまつわる「温泉寺縁起図(海北友竹 筆)」について、小川住職が絵解き形式で解説。仏縁の不思議やまちの歴史を感じていただけます。聞けばこの絵解き、明治時代に入るまでは日常的に行われていたのだそうです。
「いらっしゃった方に、その由緒や入湯作法をお伝えし、『こういうありがたいお湯なんだ』と実感しながら入っていただくのが、城崎温泉のスタート地点でした。しかし明治に入って出された神仏判然令により、昔からあった文化や風習の多くが途絶えてしまいます。『瑞風』の旅でのご案内は、まさに原点回帰です。いかに開かれ、いかに愛されてきた温泉地だったかということが、1枚の絵からおわかりいただけると思います。江戸時代に描かれた縁起図からは、300年ほど前の様子が見てとれますが、まちなみがどれぐらい変化をしているか、またはどれぐらい変化せずにいるかをご覧いただけるのも面白いところです」
講話を行う薬師庵には、文化財に指定されている掛け軸や歴代天皇の書なども展示されています。

城崎の新たな魅力に出会える「瑞風」だけの特別なプログラム

 小川住職による講和で見聞を深めた後は、自由散策へ。まち歩きを楽しめるのはもちろん、温泉寺の本堂がある大師山の中腹まで「城崎ロープウェイ」で登れば、国指定重要文化財の千手観音立像や、本坊に安置されている「温泉寺縁起図」の真筆などもご覧いただけます。

城崎ロープウェイで温泉寺の本堂へ。
山頂からは城崎温泉街と日本海を一望

「立ち寄り観光の際には、北但馬地震よりも古い時代と今のまちなみの写真も、パネルにして見比べていただく予定です。それぞれ自宅の土地を提供して道幅を広くするなど、町民一体となって取り組んだ防災対策についてもお話させていただきます。『瑞風』の車窓からもご覧いただける国の天然記念物の景勝地、玄武洞も北但馬地震によって大きな被害を受けましたが、その際に崩落した玄武岩は、温泉街の中央を流れる大谿(おおたに)川の護岸工事に石垣として使われています。今では造れない天然記念物の石垣なので、そのあたりもぜひご覧いただきたいですね。温泉街を歩くよりもまず、お寺に来てより深く知っていただくことで、今までとは違う視点で城崎温泉を味わい直していただければ」
外湯めぐりやそぞろ歩きが楽しめる温泉街として今も人気の城崎温泉ですが、その背景を実感することで、また違った魅力が見えてきます。
「江戸時代の建物が残っているわけではありませんが、その歴史を知れば逆に、江戸時代から続くまちより、もっとすごい価値を感じていただけるんじゃないかと思っています。さまざまな奇跡の上に成り立っている温泉地だということを実感していただければ幸いです。外湯巡りだけでは気づけない歴史的な魅力、人々の想いが築いたまちなみがいかなるものかを知っていただけるよう、心を込めてご案内いたします」

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